日本人が仕事の管理で最も重視することのひとつが「時間」ではないでしょうか。
始業時間、アポの時間、製品の納期、振込期日などなど、あなたも日々時間を横目に見ながら仕事するのが習慣になっていると思います。
ところが海外に目を向けますと、必ずしも時間管理を優先させていないところもあり、日本人のそれと違ってかなり「ユルい」時間感覚の人も多くいるのが実態です。
時間感覚の異なる外国人を同僚や部下、取引先に持つ場合、仕事を共に進めて行く上では時間管理についての対策が必要になります。
この投稿では海外における時間感覚の違いとして、「モノクロニック」「ポリクロニック」という時間感覚に関する文化指標についてまとめます。
目次
各国間の時間感覚の違い
朝の10時に取引先でアポがあるとします。
あなたは何時にその場所に到着しておくべきと考えますか?
10時きっかり?
10時5分前?
10時5分過ぎぐらい?
それぞれの文化で時間というものをどのように捉えているか、国際社会では地域によって異なります。
大きく分けて
「厳密に時間管理を行う文化」と、
「時間に融通をきかせ、柔軟さを重視する文化」
があり、
前者を「モノクロニック (Monochronic) 文化」、
後者を「ポリクロニック (Polychronic) 文化」と言います。
下の図は各国がどの位置付けにあるかを示したものです。
「厳密に時間管理を行う文化」
すなわち「モノクロニック文化」は
北米やアングロサクソン諸国、ゲルマン諸国、北欧、日本など
でその性質が強く現れます。
逆に「時間に融通をきかせ、柔軟さを重視する文化」、
いわゆる「ポリクロニック文化」として
南米や中東、アフリカ、そしてラテン・ヨーロッパ諸国
が入っていることがわかります。
時間感覚の違いがもたらす影響
あなたがこれまで接してこられた外国人を振り返ってみて、いかがでしょうか?
これまで私が触れてきた文献や記事の中では、次のような事例が紹介されていました。
・10時の会議だとスペイン人は11時に来るし、ドイツ人は10時より早めに来る。
・ドイツ人は約束の10分前に到着し、ベルギー人は時間きっかり。
・アメリカ人は数分遅れで到着し、レバノン人は皆が到着してから1時間後に到着する。
このような違いがある中で、
「全員が自分達が適切な時間に到着したと思っていた」
というところが海外で時間管理を行う上での悩みの種なのです。
あなたが10時きっかりに到着するのが当然と考えている場合、相手にも同様に10時きっかりに到着することを期待するのでは
ないでしょうか。
約束時間きっかりに到着することが当然と考えるあなたにとって、約束の時間に1時間遅れても平気な人達と付き合っていくのは、フラストレーションが溜まる一方ですよね。
ここでまず、時間感覚の違いを見ていくため「モノクロニック文化」と「ポリクロニック文化」のそれぞれの特徴を解説します。
モノクロニック文化とポリクロニック文化の特徴
モノクロニック文化 (Monochronic Culture) の特徴
「厳密に時間管理を行う文化」、それが「モノクロニック文化」ですが、その特徴として以下のものが挙げられます。
- 時間を「貴重な資源」であると考える
- 順序立てて物事に取り組む
- 一度に一つのことに集中して取り組む
「時は金なり」と言う言葉に代表されるとおり、時間の無駄遣いを忌み嫌います。
そのため始業時間やアポに遅刻する者に対して厳しい態度で接するのが特徴です。
モノクロニック文化の度合いが強い国では遅刻したことに対して嫌な顔をしますし、そうならないようアポの時間や始業時間に遅れないような行動を取ります。
そうした文化では遅刻をする者は
「相手に対する敬意を欠く傲慢な者」、
「プロフェッショナルではない」と
認識することがあります。
モノクロニック文化では仕事に取り組む際、しっかり計画を立てる慣習があります。
Aをして次にB、その次にC・・・という具合ですが、これに時間を加えていきます。
いつまでにAを完了、Bはいつから開始する、Bはいつ終わらせる・・・という計画を立てるわけです。
モノクロニック文化における会議は、まさにそれを表しています。
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9:00 会長あいさつ
9:15 社長プレゼン
9:30 休憩
9:45 新商品デモンストレーション
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このように物事の順序と時間をセットで管理していくことが特徴です。そして実際にそのように物事が進むようにマネジメントが行われます。
モノクロニック文化では物事を順序立てて取り組んでいきますので、基本的に一度に取り組むことはひとつです。
Aに集中して取り組み、
それが終われば次にBに集中して取り組む・・・
それを積み重ねていくのがモノクロニック文化の特徴です。
例えば上の会議の例では、プレゼンの時間はプレゼンだけで、
ディスカッションは含みません。
ポリクロニック文化(Polychronic Culture) の特徴
ポリクロニック文化では以下のような特徴があります。
- 時間は常に目の前にたくさんあるものと考える
- 物事に取り組む計画や順序は考えるが、あくまで目安
- 一度に複数のことに取り組む
「時間は川の流れのように流れ去ってしまえば帰ってこない」
という感覚がありません。
どちらかというと目の前に「時間」という
大きな海が広がっているイメージです。
だからアポなどの時間に多少遅れても問題ないという風潮があり、
遅れてきた人を責めることもなく寛大な態度を取ります。
また食事や勤務の合間の休憩に多くの時間を費やします。
家族や友人をはじめ周囲の人とのおしゃべりに興じ、
時間や仕事より周囲との関係を重視します。
アポの時間に間に合うよう汗をかいて走っている
モノクロニックな人達を横目に、ポリクロニックな人達は
次のように考えるわけです。
「交通渋滞があったんだから、アポに間に合わなくたってしょうがないじゃないか。」
「ここに来る途中で知合いに会ってしまった。いいじゃないか、ちょっとぐらい立ち話して遅れたって。」
ポリクロニック文化の人達も仕事上、計画を立てて取組みますが、計画に固執するよりも現実や現状に照らして柔軟に対応することを重視する文化と言えます。
モノクロニック文化では、
例えば「D」という結果を出すために
「A → B → C」という具合に仕事の段取りを計画し、
その通りに進めようとします。
一方、ポリクロニック文化では以下のようなことが普通にあり得ます。
「A → C → B → D」
「B → Aの半分 → C → Aの残りの半分 → D」
また物事の締め切りや納期など、日本では大いに注意を払いますが、ポリクロニック文化では締め切りも「目安」でしかなく、厳守しなければならないものではないという感覚があります。
時間に柔軟性を持つことを重視するポリクロニック文化では、その柔軟さや人との関係を重視するゆえに複数のことが一度に重なってしまうこともあります。
例えば重要なアポで会議室に入っているのに、会議中にスマホにかかってきた電話に出たり、
全く関係のない関係者が会議室に入ってきても問題にしないどころか、その人と会話し始めたりすることも普通の行為です。
外国人から見た日本人の「奇妙な」時間感覚
日本人は一般的に「モノクロニック文化」に入ります。
次のようなことをよく言いますね。
- 時は金なり
- 時間は二度と戻ってこない
- お客様をお待たせしてはいけない
- 遅刻厳禁!
- アポは時間厳守
- 締め切りは死んでも守れ!
このようなことを言ったり言われたりすることが小さい頃から我々の身に染みているわけですが、こうして時間感覚に厳しくなっていったのだと考えられます。
ただし、時間時間とこれだけうるさい日本人について、外国人からはこんな声があるのも事実です。
意思決定は遅い!!!
意思決定にはものすごい時間がかかる!
普段あれだけ「時間、時間」というわりに、日本人の意思決定はえらく時間がかかる場合があります。
特に重要な意思決定には多くの人が関わるのが習慣です。
普段時間に「ユルい」ポリクロニックな人達にしてさえ、この日本人の意思決定の遅さには文句を言う人は多いです。
そしてもうひとつ。
就業時間、長すぎ!!!
日本企業はもちろん、会社と呼ばれる組織では始業時間とともに終業時間も決まっています。
しかし定時に帰ることが未だに憚られるような会社もまだ多いように思います。
そしてそんな日本企業に勤める外国人からすると、
なぜあれだけ始業時間にはうるさいのに、終業時間についてはそれを厳守しないのか!?
と不思議に思われているものなのです。
結局、日本人が時間に厳格とはいえ、場面によってそうではないところも多いというのは我々も認識しておく必要がありそうです。
なお、時間感覚が会議の仕方にどう影響を及ぼすかを考察したこちらの記事も参考にしてください。
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