日本では比較的きめ細かい「報連相」が求められることが多いように思います。
それによるメリットもたくさんあるわけですが、海外の人たちにはそのように映らないこともあります。
ここでは日本での一般的な「報連相」の仕方、報連相についての考え方と
海外で見受けられる「報連相」の仕方や考え方について整理していきます。
目次
日本における「報連相」
日本の「報連相」の特徴
報連相は基本的に「下」から「上」に向かって「ひとつずつ」階段を登るようにして行われます。
そこでは「一段飛ばし」や「二段飛ばし」などは御法度のことも多く、「下」の人は直属の目上の人に報連相するのが基本です。
イメージとしては下図のようになります。
他の部署、外部の関係者との仕事する場合、例えば「下」の人同士で話し合って問題を解決したり、「下」の人たちだけで物事を進めることも認められないことが多いです。
他の部署や外部の関係者と仕事を進める上では、まずそれぞれの部署や会社内で「下」の人が「上」の人に報連相をすることが求められます。
その上で「上」の人同士で話し合って、そこで「OK」が出て初めて「下」の人が動けるようになるのです。
関係者とのメールのやり取りにおいては、直接の担当者同士のやり取りにおいても「CC」にそれに関係する上司や同僚など全てを加え、メールでのコミュニケーションを行うのが一般的です。
業種や組織によっては上のようなメールでのコミュニケーションに加え、「日報」「月報」など定期的な報告が求められることもあります。口頭のみならず報告書という形式を合わせて採用するところも珍しくありません。
日本における「仕事の進め方」についての考え方
日本では一般的に上のような「報連相」の形態をとることが多いのですが、それは「仕事をいかに進めていくべきか」について以下のような4つの考え方が影響しています。
上下関係に基づく組織内の秩序・一体感を重視
組織を運営していく上では、その構成員やメンバーがそれぞれ個々でバラバラになって進むのではなく、全員が同じ方向を向き、一体感をもって仕事を進めていくことを重視します。
その具体的な方法としては「上」の人が中心となって意思決定・意思統一をし、「上」は「下」が組織の方針や方向性にあった行動ができているかを管理・監督します。
そして「下」は「上」に従うべきという前提があり、「下」のメンバーが勝手な行動をすることが抑制されます。このようにして「上」から「下」まで組織の方針や方向性が浸透し、組織としての秩序や一体感が醸成されていくのです。
ですから報連相の仕方としても「下から上にひとつずつ階段を登る」という方法が徹底され、それが合理的だということになります。
チーム内で共通認識を持つための情報共有が重要
組織としての秩序や一体感を確保するためにも、まずは「上」が「下」の仕事への取り組みやコミュニケーションを確認することが必要になります。
またメンバー個々が取り組んでいる仕事やその進捗も関係者が一体感を持って取り組んでいくためにも情報を逐一共有していくことが重要という考えがあるのです。
だからメールをひとつ送るにしても担当者感だけでメールのやり取りをして終わるのではなく、関係者を全員メールの宛先に含めて共有するという報連相の態度になるわけです。
問題を未然に防ぐことが肝要
問題が起きてからその対処にあたるのではなく、問題は大きくなる前に潰してしまうことが大事です。
そのためにも普段から密なコミュニケーションや情報共有が必要となるため、上で説明した通りメールのやり取りでも進捗などは関係者間で共有されることが通常ですし、口頭のみならず書面での報告を求めるなど、報連相の頻度が多くなるわけです。
仕事の効率を上げる
仕事の効率を上げるためには関係者間の協力やチームでの一体感が必要という考えがあります。
例えばあるメンバーが何か問題に直面した時、周りがそのサポートに回ることで仕事の効率も上がるということです。
そのためにも普段からどのメンバーが何をしているか、進捗はどうなっているか、問題なく物事が順調に進んでいるかをお互いに共有し合うことが大事になります。
そのため報連相においてもメールを関係者全員に送ったり、周囲とマメに報連相を行うという行動につながっていくのです。
海外での「報連相」
ここでは話をわかりやすくするために日本以外の国々を「海外」と一括りにして話を進めていますが、日本と同様の考えで報連相をする文化、組織もたくさんあります。
そこはあらかじめ承知の上で、以下、日本との比較で「海外」における報連相の特徴を挙げてみます。
海外での「報連相」の特徴
報連相で上らなければならない「階段」が「存在しない」
日本のように「ひとつずつ階段を登る」報連相をする文化もありますが、報連相を職位や階層に沿って行うのではなく、直接関係するメンバー同士で進められることが一般的です。
例えば「上」のある個人が情報やリソースを持っている場合、それに関心のある「下」のメンバーが直接その「上」のメンバーに報連相をすることがよくあります。
極端なことを言えば、平社員のメンバーが社長に直接相談を持ちかけたりアドバイスを求めることもあります。
ただそこでは、平社員と社長以外のメンバーにその情報が共有されないことになります。
報連相は担当者間のみで行う
日本のように直接関係のないメンバーをメールに含めるなど逐一報連相や情報共有するのではなく、あくまで直接関係のある者同士でのコミュニケーションをします。
海外における「仕事の進め方」についての考え方
このように海外の国や文化によっては日本のようなきめ細やかな報連相が行われないことも多いわけですが、それはそこでの仕事観、仕事に進め方の考え方が違うということになります。具体的には以下のような特徴があります。
自分の責任・役割の範囲で仕事を進めて「当然」
仕事というのは逐一上司にお伺いやアドバイスを求めてやるのではなく、「プロ」として各メンバーがそれぞれの責任や役割を全うして当然という考えがあります。
ですから報連相においても「下から上にひとつひとつ階段を登る」必要はなく、個々のメンバーが自律的・自発的に仕事を進めることが基本です。
そのような環境では逐一「上」に相談したりアドバイスを求めるようでは「プロとして失格」とみなされることもあります。「上」の人も「下」が何をしているか、何がどこまで進んでいるか、何をしようとしているかを細かくチェックすることも日本と比較して少ないわけです。
問題解決は自分でできて「当たり前」
上のことにも関係しますが、個々のメンバーはそれぞれが自分の責任・役割において自分で問題解決することが当然と考えています。
もちろん自分だけで解決できない場合はその限りではありませんが、基本的な考えとして個々のメンバーが問題解決をして当然で、それができなければ周囲に認められないという意識が強いです。
だから報連相においても逐一周囲に情報を共有したりすることなく、各個人が必要な人間とだけ報連相をすることによって仕事を遂行することが期待されるわけです。
成果を上げるための効率重視
ある個人が情報やリソースを持っている場合、それを必要とするメンバーはその個人に直接コンタクトをとり、情報を得ることでどんどん仕事を進めていきます。
そうする方が仕事で成果を効率的に遂行できるわけですから、日本のように「ひとつずつ階段を登って上の人からアドバイスや許可をもらう」というような報連相をしないわけです。
上下よりも「平等」
日本では上下関係を基にした組織内の秩序や一体感を重視しますが、そうした「上下意識」が希薄な文化も多く存在します。
そこでは例えば平社員と部長といった肩書き上の違いはあっても、基本的に「同じ社員の一人」という考えの方が強いわけです。仕事や報連相をする上でも組織内の階層に沿って行うのではなく、お互い相手がどの職位レベルであっても平等なコミュニケーションを行える素地があるということになります。
もちろんそこで組織上のルールが皆無ということではありませんが、それでも「上が下を管理する」とか、「下は上の言うことに従うべき」という考えは日本と比較して低いところも多いのが実情です。
ですから報連相においても「階段をひとつずつ登らなければならない」という認識はほとんどありませんし、必要なら一番組織で「下」にいる人が社長から直接情報を仕入れることも受け入れられるわけです。
「報連相」の仕方が違うことによる違和感
上でご説明した通り、日本と海外では「仕事の進め方」や「価値観」が異なるので「報連相の仕方」や「報連相とはこうあるべきだ」という考え方も異なります。
ですから海外の方と仕事をしていると、相手の報連相の仕方を見て、お互いがお互いの報連相のあり方に違和感を覚えるわけです。
日本人が海外型「報連相」に対して抱く違和感
必要な情報がタイムリーに入ってこない
日本での一般的な感覚からしますと、海外では報連相が少ないため情報があまり共有されないと感じることがあります。
また報連相のルールが日本ほど厳密に確立されていないケースも多いため、なおさら「いつ」情報が入ってくるのかがわからないため、物事が計画通りに進行しているのか、問題は発生していないのかといった心配が増していくということです。
無秩序・非効率な仕事の仕方に見える
日本なら「上」の人が中心となって組織の方向性や方針を決め、部下がそれに沿ってそれぞれの仕事を進めているかを報連相によって確認します。
しかし海外ではそうした報連相が少ないため、メンバー間の意思統一ができていなかったり、違ったメンバーが同じようなことを行っていたり、対応しなければならないことを誰もフォローしていないということが発生することがあります。
そういった問題が発生してからアタフタと仕事の調整をしなければならなくなりますので、帰って仕事の生産性や効率が落ちてしまうと感じるわけです。
チームとしての一体感がない
報連相についてのルールやがシステムが明確でないので、一体どこで誰が何をしているかがわからなくなります。
そうした情報が入ってこないので、各メンバーがそれぞれ好き勝手に動いているように見え、それでチームとしての一体感や統一感が感じられなくなるわけです。
上司に対する敬意が感じられない
海外の方たちの中には「上下関係」よりも相手との「対等」「平等」を重視する文化があります。
そこでは部下はたとえあなたが組織の上層部にいたり、相手の上司という位置付けであっても、綿密に報連相しないことがあるわけです。
しかしそうした相手の態度は、あなたに対する敬意を欠いているように感じることがあるかもしれませんね。
海外の方が日本型「報連相」に対して抱く違和感
スタッフを「信頼していない」ように映る
日本型「報連相」では部下やメンバーに頻繁に報連相を求める傾向があります。
仕事を自立的に、自発的に責任感を持って取り組むことが当然と考えるスタッフにとっては、逐一物事の進捗を確認されるため、上司が部下を信頼していないように感じることがあるのです。これを放置しますと、スタッフがヤル気をなくしてしまうこともあります。
日本型「報連相」は部下の仕事を逐一確認する傾向があるので、それをマイクロマネジメントだとして反発するスタッフがいます。
いちいちスタッフの仕事を確認したり、承認や許可を求める日本人上司のマネジメントスタイルを良しとしない文化もたくさんあるということです。
レポートばかりで負担が大きすぎる
日本型「報連相」はその頻度が多くなる傾向があるため、レポートや報告ばかり求められるスタッフからするとその行為そのものを負担に感じることがあります。
また報連相が形骸化しているケースもあり、そもそも何のために報連相をするのかに疑問や反発心を抱くスタッフも見受けられます。