外国人と仕事をしていると、
自己主張の強さや、
立場もわきまえずに意見を言ってくるなど、
戸惑うことが多くありませんか?
この記事では「ハイコンテクスト」「ローコンテクスト」という切り口から、
「なぜ外国人は思ったことを堂々と言ってくるのか」、
「日本人の一般的なコミュニケーションの仕方は外国人にどう映っているのか」、
「外国人とのコミュニケーションをどう行っていくべきか」
について考察します。
目次
ハイコンテクスト文化とは?
ハイコンテクスト文化におけるコミュニケーションでは
話し手が「何を言ったか」ではなく、「どのように言ったか」を聞き手が敏感に察知し、相手の意図を汲み取っていかなければなりません。
言い換えれば、
ハイコンテクスト文化とは聞き手にこちらの意図を汲み取ってくれることを期待する文化なのです。
ハイコンテクスト文化におけるコミュニケーションの特徴としては、以下のようなものがあります。
- ストレートにものを言わない
- やんわりと、さりげなく否定する
- 仄めかしを多用する
- あえて「わかりきったこと」を言わない
ハイコンテクスト文化では「文脈」、
つまり話し手と聞き手が既に価値観や知識、認識を共有していますので、既にわかっていることは「いちいち言いません」。
また相手との関係性を考慮したり、その場の雰囲気を敏感に察知し、直接思っていることを言うとマズい場面では「やんわり」「さりげなく」言うか、言葉で言わずに態度や表情で示すだけです。
※ハイコンテクスト文化の詳しい考察は別記事を参照してください。
ローコンテクスト文化とは
「ハイコンテクスト文化」と対照的なのが「ローコンテクスト文化」ですが、コミュニケーションの特徴としては以下のようなものがあります。
- 思っていることを単刀直入に言う
- コミュニケーションでは明確さを重視する
- 誤解を避けるために「わかりきっていること」も何度も繰り返す
ローコンテクスト文化では
「わかりきったことでも気になる場合は躊躇せず発言する」、
「曖昧になることを避け、直接、はっきりと言う」、
「しっかり相手にこちらの意図が伝わるよう、何度も繰り返す」
ことが特徴です。
そしてローコンテクスト文化の人達にとっては「お互いが自分の思っていることをストレートに、明確に伝えあうことがよいコミュニケーション」ですので、曖昧さや不明瞭さの残るコミュニケーションを忌避します。
※ローコンテクスト文化の詳しい考察は別記事を参照してください。
世界各国の「ハイコンテクスト」「ローコンテクスト」の位置づけ
下の図は、「ハイコンテクスト文化(図の右側)」、
それと対極の「ローコンテクスト文化(図の左側)」という指標において、
各国がどの位置付けにあるかを示したものです。
全世界の国々を網羅していませんが、だいたい地域ごとに特性が偏っているように見えます。
アジア(中国、韓国、インドネシア等)や
中東(イラン、サウジアラビア)、
アフリカの国(ケニア)は
ハイコンテクスト文化(図の右側)に偏っていますし、
欧米諸国はローコンテクスト文化の特色がより強いことがわかります。
そして日本は最も右側に位置することが示すように、
「日本は世界一のハイコンテクスト文化」なのです。
世界一のハイコンテクスト文化が日本であることの意味
日本が世界一ハイコンテクストな文化であるということは、
日本が世界で最も直接的な表現を避け、思っていることをそのまま口に出して言うことが世界で最も少ない文化
ということになります。
アジアや中東の国々もどちらかと言えばハイコンテクストな文化ですが、それでも「世界一」の日本には及びません。
ということは、日本人以外の人々は日本人よりは直接的な表現を用い、思っていることをそのまま口に出して言う度合いが高いということになります。
ですから外国人がやたらと自己主張が強いように感じたり、察して欲しい場面で察してもらえないのは当然なのです。
日本人のコミュニケーションはどのように映っているか?
「意味不明」
ハイコンテクスト文化というのは、
お互いがビジネス慣行や習慣、価値観、知識、認識を共有しているが故に「直接言わなくても何となくわかりあえる」社会です。
そしてモノの言い方からこちらの意図を相手に察してもらえることを期待する文化です。
特に相手に言いにくいことがある場合、関係が壊れてしまうことを恐れるためそれが顕著になります。
しかし、「わかりきったことを言わない」という日本人の態度について、その「日本人の間でわかりきったこと」が理解できない外国人にとっては誤解を生む温床でしかありません。
明瞭なコミュニケーションをヨシとするローコンテクストな人達にとって、言葉で表現されていない内容は理解ができません。
日本人が「察してくれないかな~」と思ってモゴモゴしていても、「つまり、何がどういうことなのか」がはっきりしない場合、それはコミュニケーションそのものが成立していないことを意味します。
「この人は信用できるのか・・・???」
世界一ハイコンテクストな日本人は、外国人から世界一誤解されやすいのです。
ローコンテクスト文化の人達にとって
「ほのめかし」は「誤魔化し」、
「直接相手にはっきり言わない」のは「相手を騙している、欺いている」
のと同じです。
相手の気分を害さないように「ほのめかし」、はっきりとこちらの立場、意見を言わないことで、相手はそういった態度を取る日本人を「誠実ではない」と捉えますし、「何か隠し事でもあるのではないか?」などとあらぬ解釈をするようになります。
「あなたは本当にデキる人なのか?」
自分のことを謙遜することが美徳であると考える方も多いのではないでしょうか。
これまでの自分の実績や達成したこと、自分で頑張っているところをアピールするのに気後れしたり、抵抗がある方も多いかと思いますし、私自身もそうです。
多くの実績があるのに「いえいえ、大したことはやってませんから」、多くの経験があるのに「ちょっとかじったことがあります」、会社のため、真剣に目の前のことに取り組んでいるのに「まあ、ボチボチやってます」。。。
これでは海外のパートナーはあなたがパートナーとして本当に適切かどうか、
「この人、大丈夫なんだろうか?」
と心許なくなるだけです。
事実以上のことを大きく見せて言う必要はありません。
しかし、本当のことであれば本当のこととして、そのまま言葉で伝えることは自分を守ることでもあります。
異文化環境でどのようなコミュニケーションを心がけるべきか
異文化環境では「直接的」「明確」「簡潔」なコミュニケーションが基本
基本的には、
ローコンテクスト文化のコミュニケーションの性質、
つまり「直接的で」「明確」、「簡潔」で「曖昧さを排除した」コミュニケーションを心がけることが大原則です。
特にお互いの仕事の進め方や各人の役割、事実の確認、実績、依頼の背景・理由、契約内容(納期や諸条件、契約金額等)に関することでは曖昧さは徹底的に排除した方が賢明です。
今となっては「いわくつきの人」になってしまいましたが、かつて日産自動車の会長を勤められたカルロス・ゴーン氏が、
同社での仕事の進め方についてインタビューを受けているテレビ番組がありました。
そこでゴーン氏は
「日常使っている専門用語、社内用語や社内ルール、何気なく使っている言い回しに至るまで、全社員が共通認識を持てるよう毎日確認を繰り返している」
と言っていました。
当時からゴーン氏をはじめ、日本人以外の外国人スタッフが常駐する中で、ありとあらゆることを明確にし、スタッフ全員が同じ認識でいなければどこかで仕事に支障が出てしまうからとおっしゃっていたのが印象的でした。
例えば「レポートは明日提出」という場合でも、「明日というのは何月何日、何曜日のことか」、「明日の何時までに出すのか」、徹底的に詰めて口頭などで確認するのです。
なぜなら、明日というのは「将来のいつか」という意味を持つ文化もありますし、明日中だれば夜中でもいいんだろう、と勝手な解釈をする人がいないとは限らないからです。
異文化環境でも気を遣わなければならない場面はある!
「海外はローコンテクスト」
つまり言葉による直接的、明解なコミュニケーションが一般的というのはいくら強調してもし足りないくらいです。
ただし!
相手にとって悪いニュースであったり、人事評価・査定などの場面で、どうしても相手に否定的なことを伝えなければならない場面、ありますよね?
できるだけそんな役割を引き受けたくないのですが、仕事の性質上どうしようもないことがあります。
外国人相手だからということで、ありとあらゆることに対して本音を直接ぶちまけている日本人を見ることがあります。
「日本以外はローコンテクスト文化、だから何でもはっきりと自己主張しないとダメだ」
と言い切る人もいます。
しかし私はそれは間違っていると思います。
「デキが悪い」人に対してそのまま「デキが悪い」と言っても全く問題がない文化もありますが、普段は思ったことをズバズバというのに、否定的な見解を出すときにはベールに包んだ表現をすることが一般的な文化もあります。
ローコンテクスト文化が世界一強いとされるアメリカでさえ、そういうところがあります。
相手に否定的なことを伝える方法については別の投稿でまとめていきますが、
要は日本のような「階層社会(縦社会)」であったり、「集団主義的な文化」、「平等主義的な文化」では特に注意が必要です。
いくら日本以外がローコンテクスト文化であっても、世界にはそれぞれたくさんの「常識」が存在します。
外国人がいくら直接的で明確なコミュニケーションを好むからと言って、相手にあらゆることをただブチまけてしまうのは賢明ではない、ということはここで申し上げておきます。
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以上、ハイコンテクスト、ローコンテクストという観点から異文化環境におけるコミュニケーションのあり方を考えてみました。
このハイコンテクスト、ローコンテクストは色んな場面で登場します。このブログでも、様々な事例を上げながら述べていきたいと思っています。
動画でも解説しています!
今回のお話を、もう少し言い方を変えて以下の動画で解説しています。よろしければ是非ご覧ください!