アジアや新興国・途上国のパートナーや同僚、スタッフなどと仕事しているとき、
メールを送って情報を共有したり、メールで相手から必要な情報を得ようとするのですが
こちらが欲しいと思っているフィードバックや、明確な回答が相手から返ってこないどころかメールへの反応が全くないこともあります。
・明日のアポの時間を再確認する
・作業進捗を問い合わせる
・ミーティングでの決定事項をリマインドする
・現在のプロジェクトの進捗を尋ねる
・大事な用件で海外のスタッフに相談する
などなど、
遠方に離れているからこそメールでコミュニケーションをしようとしているのに待てど暮らせど相手からの返信がない。
あなたもそんなご経験はありませんか?
私もこれまで20年以上にわたってアジアや新興国・途上国6カ国で仕事する中で、メールを送ったから何となく安心していると、返信が来ずに後になって焦ってしまった経験がたくさんあります。
そんな状況になると海外のパートナーや関係者に対し
・私との仕事はヤル気がないのでは?
・相手は仕事の処理能力に欠けるのではないか?
・私とのビジネス関係を重視していないのではないか?
など、相手に疑念を抱いたり、相手に対してネガティブな感情を持ってしまうのです。
この投稿では相手があなたのメールに返信しない理由について「異文化」という切り口からお話します。
アジア・新興国・途上国におけるコミュニケーションのロジック
アジアや新興国・途上国におけるコミュニケーションの前提となる考え方・価値観
グローバルサウス地域の社会で大切にされている「モノの考え方」やビジネスにおける信頼関係づくりについて「前提となる考え方」「社会的価値観」について考えてみましょう。
そこでは以下のとおり3つの特徴に集約されます。
① 組織やグループ内での人間関係を敵対させるのではなく感情的な結びつきを重視し、できるだけ円滑で心地のいい関係を築くべきだということ。
② 上下関係を重視し、「下」のポジションの者は「上」の者に対し従順であることを示すことで敬意を表すことが重要であること
③ 大勢の前で特定の個人に対し恥をかかせたりメンツを失わせることはタブーであること
このようにグローバルサウスと呼ばれる地域では
・グループ内での円滑な人間関係
・相手との関係で相手にネガティブな感情を持たせない
ことに焦点が当てられていることが大前提です。
そしてそうした考え方が日々のコミュニケーション、ビジネスコミュニケーションの態度に影響を与えているのです。
アジア・新興国・途上国におけるコミュニケーションの傾向
「グループ内での円滑な人間関係」
「相手との関係で相手にネガティブな感情を持たせない」
そうしたことを重視する社会的価値観があると、それがどんなコミュニケーションの態度となるのでしょうか?
アジアや新興国・途上国におけるビジネス・コミュニケーションの最たる特徴として
ハイコンテクスト
つまり
● 言葉による直接的な表現でコミュニケーションをするのではなく、間接的表現や曖昧な表現を使う
● 沈黙も一つのコミュニケーション手段として捉えている
● 相手の顔の表情や目線、声のトーンなど言葉以外の部分から相手の真意や意思を読み取る
● あらかじめわかりきったことは暗黙の了解があるとしてコミュニケーションをはしよる
といったことが挙げられます。
直接的な言葉によるコミュニケーション(ローコンテクスト・コミュニケーション)をしてしまうと
双方の主張の違いが言葉になって表出することで対立関係があからさまになり
そこから相手との人間関係にヒビが入ったり、相手の面子や気分を害してしまうことを危惧するのです。
ですからそのような社会では言葉による直接的な表現を使う人を
「攻撃的」「短絡的」「無礼」「無神経」
と否定的に捉える傾向があります。
特に
・相手との見解の相違を述べる場面
・相手が明らかに気分を害しそうな悪いニュースを伝える場面
・相手に批判的なフィードバックをする場面
になると、相手の感情に配慮するためより一層曖昧な表現を使ったり、沈黙したりといったハイコンテクストな特徴が現れます。
最後に触れた「あらかじめわかりきったことは暗黙の了解があるとしてコミュニケーションをはしよる」については、
これも「お互いに信頼関係がある」と相手が考えている場合、あまりにも当たり前のこと、日々のルーティーン、日常業務で誰もが当然理解していることは省略してコミュニケーションを行います。
お互いに分かりきっているんだから、あえてそれを指摘したり繰り返していう必要性を感じないわけです。
そこで相手に逐一確認を入れるような行為は「こちらのことを信頼していないのか?」と相手が不快な気持ちになってしまうのです。
私のメールに対しいつまで経っても返信がこなかった理由
あまりにも当たり前すぎて、コミュニケーションが省略されてしまった
場面によってその理由は異なりますが、一つ驚かされたのは先ほど述べた
「あまりにも当たり前すぎて、コミュニケーションが省略されてしまった」
からでした。
例えば会議で決まった
「誰が何をいつまでにするのか」
を改めてメールで送った場合、相手にしてみればその会議で繰り返し言及されたことだから
「わかりきったこと」
なのです。
だから私がいくらリマインドしたところで相手にしてみれば、あえて私に
「わかりました、Mr.おかべ、○○までにXXをやっておきます」
などと逐一反応しなければならない必要を感じていないということなのです。
むしろ、会議で確認されたことをまた私がメールでリマインドしたり念を入れて確認したりする行為そのものが
「こちらのことを信用していないのか?」
などとあらぬ解釈をされてしまいました。
上下関係
私の考えをメールで送っても返信がこないのは、私と相手の上下関係が影響していることもありました。
私がマネージャーという「上」のポジションにいるため、「下」のパートナーやスタッフたちは私につい遠慮したり、
私が気を悪くしてしまわないかを相手が懸念していたため、何となく相手もメールを私に送ることを躊躇していたということです。
感情的結びつきに基づく「信頼関係を軽視した」と解釈された
特に
・重要な案件
・慎重な対応が求められる課題
・お互いの協力が不可欠な懸案事項
など、関係者に共有したり、課題解決に向けたアイデアなどを得たいときもまずはメールを送って相手からの反応や回答を待つのですが、そういうことに限って何も反応がなかったりすることがありました。
そんなときは「いったいなぜ何も反応してくれないのだ?」とストレスが溜まる一方でした。
一度そんな不満を相手にぶつけたところ、彼らから言われたことはとっても意外なことでした。
それは
「そんなに大事なことなら、なぜメールではなく直接会いに来たり電話で言って来ないんだ?」
ということだったのです。
先にも述べた通りアジアや新興国・途上国では「感情的な結びつきに基づく信頼関係」が必須です。
困った時はお互い様で、真剣にその課題や悩みに向き合い共に協力していく。
そんな関係を相手は期待しているのに「メールを送って済ませようとした」行為そのものが相手の気分を害してしまっていた、ということなのです。
あなたも本当に大事な用件なら、その人に直接会って話をしたいと思いませんか?
相手の時間を使ってしまうのが申し訳なくて、ついメールで済ませようとすることは多いかもしれませんが、アジアや新興国・途上国での人々の生活を見ていると、みな驚くほど電話やおしゃべりに興じている時間が長いのです。
つまりコミュニケーションというものについて、その基本は対面でのものであったり、電話でお互いの声を聞きながら行うコミュニケーションだということです。
そこにお互いの信頼関係があるのなら、なおさら相手と面と向き合ってコミュニケーションするのが当然だという考えがあるということを念頭に置いておく必要がありそうです。
アジアや新興国におけるコミュニケーション上のマインドセット
あなたも私が経験したように、アジアや新興国・途上国のパートナーとのコミュニケーションで困った経験や、メールのやり取りで同じような場面に遭遇したことがあるかもしれませんね。
そんな時、思うような反応がないことに対して苛立ち、ストレスを感じるかもしれませんが、一度相手の「ロジック」を思い返してみることで対策を講じられると思います。
まず必要なマインドセットとして、相手は何もあなたのことを軽視していたり、あなたのメールを無視しようとしているのではないということを認識しておく必要があります。
確かにメールに返事や反応がないことで、無視されているとか、こちらとの仕事や関係はどうでもいいのか?などと相手に対し疑念を抱いたり、不快感を持つかもしれません。
でもあなたへのメールの返信がこないのは、上に述べたような相手なりのロジックがあるということをまず思い返して欲しいのです。
対策
特にアジアや新興国・途上国など、ハイコンテクストな相手とのコミュニケーションで重要なポイントとして以下のことに取り組んでみることをお勧めします。
相手とプライベートなコミュニケーションの場を設ける
相手との関係や上下関係への配慮、相手のメンツを失わせることを何よりも恐れる人たちですので、大勢がいる状況を避ける必要があるということです。
メールも大勢の人たちが宛先やCCに入っている場合、誰かがあなたのメールに反論しようとしても心理的に抵抗を感じる人が多いということを理解しておくべきです。
そのため、最も有効なコミュニケーションとしては相手と非公式な場、よりプライベートな場で相手とコミュニケーションを図ることが有効です。
対面で難しければ1対1や少人数でのオンライン会議も大変有効です。
他に見ている人がいない、聞いている人がいないという状況を作るだけでも相手は心理的な安全性を感じることがあり、本音を語ってくれることも多くなります。
何よりこうしたプライベートな場を設けることで、ハイコンテクストな相手のコミュニケーション、つまり言葉以外の情報から相手の真意や本音をより明確に得られることも大きなメリットです。
電話してみる
メールにあまりにも返信がない場合、相手が何らかの障害や問題を抱えている可能性があります。
あなたに対して言いたいことがあるのに言えない、あなたのメールに対して不明な点があるが、何となくメールしずらくて躊躇している可能性があるのです。
そんな場合、対面で会うことが難しいなら多少面倒だと思っても電話をかけてみることをお勧めします。
相手の声のトーンから得られる情報が得られることを保証します。
メールではなくWhatsAppなどを使ってみる
単なる確認事項ならWhatsAppなどスマートフォンでのコミュニケーションツールを使う方が手軽にコミュニケーションが可能です。
少なくとも相手があなたのメッセージに目を通したかどうかがわかりますし、日常生活で相手も使い慣れているなら相手も返信しやすくなります。
相手の何らかの反応が確認しやすくなることであなたのストレスも少しは軽くなるのではないでしょうか。
コミュニケーションのルールを確立する
上のような対策をとった上で、チームのメンバーを集めて日常業務におけるコミュニケーションルールを作るのは大変有効です。
特に相手との関係が始まってから、相手と仕事を始めてから3ヶ月程度経った頃にそれまでの仕事の仕方やコミュニケーションで
・あなたがそれまでどんなフラストレーションを感じたか
・相手があなたのコミュニケーションに対しどんなストレスを感じているか
を相手と議論し、そこからコミュニケーションのルールづくりをしていくことはとても大事になります。
相手との信頼関係ができているということが前提になりますが、コミュニケーションのルールを共有していくことでお互いが少しでもストレスなく、快適に仕事ができる環境づくりが形成されていくのです。
これはあなたがアジアや新興国・途上国でのビジネスを成功させるための最も基本的なことだと言えるでしょう。
番外編:英語でのコミュニケーションについて
アジアや新興国・途上国では英語力がコミュニケーションに影響することがあります。
私の場合、問題点を提起するためにあるとき英語でパートナーたちに送ったことがありますが、全く反応がありませんでした。
その理由は
「私のメールが長すぎて、数段にわたって書かれている私の英文メールを開いた瞬間にメールを閉じられてしまっていた」
のです。
アジアや新興国・途上国においても英語が得意な方はあなたの想像するより多いと思います。
それでも英語でのコミュニケーションにストレスを感じている人も同じく多いわけで、
あなたのメールを開いた途端に長々と数段にわたって記載されているメールを見た瞬間にストレスを感じ、メールを閉じてしまうことがあるということに留意する必要があります。
メールはできるだけ短く、要点だけに絞って相手が反応しやすいような問いかけを加えるなど、対策が必要でしょう。
また前項にも関係しますが、できるだけ会って話をするよう心がけるのも有効です。
なぜなら対面ならお互いの英語力に課題があったとしても、相手の反応を見ながらその場でコミュニケーションを深められるからです。
お互いの英語力が心もとないのなら、対面でコミュニケーションをする時間をできるだけ確保することが有効です。