日常生活で無意識に時計やカレンダーを見ることって多くありませんか?
日本人は一般的に
「時間厳守」
「締め切り厳守」
が当たり前の
「時間に厳しい文化」です。
決められたスケジュールどおりに物事を動かそうとしますし、周囲の行動も読みやすいと言えます。
また
「相手の時間を無駄にしてはいけない」
という規律があり、「待たされる」ことが少ないことも日本の特徴だと思います。
私もいろんな国で仕事をしてきましたが、日本と同じく
「時間に厳しい文化」
もありますが、それでも日本人の基準から見ると
「時間にユルい文化」
に感じてしまう国や地域が多いなと感じます。
私は日本人と外国人との仕事の間で
「板挟み」
になることが多いのですが、その最たるものが
「時間感覚の差」
による板挟みです。
「時間に厳しい文化」
「時間にユルい文化」
それぞれの特徴を記しますと
以下のようになります。
– – – – – – – – 時間に厳しい文化 – – – – – – – –
・締め切りやスケジュールを重視。
・ひとつの作業が終わってから次の作業へと進む。
・一度にひとりずつ、邪魔は入らない。
・組織性や迅速さに価値が置かれる。
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– – – – – – – – 時間にユルい文化 – – – – – – – –
・場当たり的に作業をすすめる。
・様々なことが同時に進行し、
邪魔が入っても受け入れられる。
・大切なのは組織性より順応性、柔軟性。
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私がヨルダンに来て間もない頃、こちらの方のお部屋でミーティングをしていたときのことです。
仮にその人の名前を「アリ」としておきましょう。
予算に絡む大事なミーティングで、途中で邪魔が入らないようアリ氏も部屋のドアを閉めてくれ、いくばくか重い雰囲気の中、二人でミーティングしていました。
ところが20分ぐらい経った頃、
ノックもなくいきなりバーン!とドアが開いて見知らぬ人が入ってきました。
「やあ元気!?久しぶり!」
どうやらアリ氏の知り合いのようです。
「あの・・・大事なミーティング中なんですけど」
私は無言でその闖入者に対し「目ヂカラ」でもって抵抗しました。
しかしそのときアリ氏は立ち上がり
「おおおぉぉぉ!久しぶり!!」
なんて両手を広げて満面の笑みを浮かべているのです。
唖然としている私を尻目に彼らは固い握手と抱擁をかわしています。
相当久しぶりの再会だったようで近況を伝えあっているのでしょう、アラビア語のにぎやかな会話が続きます。
「あの・・・大事なミーティング中なんですけど」
という言葉が私の頭の中でむなしく響くだけで、私はボーッと彼らのやり取りを眺めていました。
するとアリ氏は私を振り返り
「コウイチ、この人ね、モハマド。
俺のベストフレンド」
続けてモハマド氏に私のことを紹介します。
「この人は「コウイチ」、
ヤバーニだよ
(アラビア語で日本人男性)」
するとモハマドと呼ばれた紳士は私に向かって
「お~、ヤバーニか!
ウェルカム!ウェルカム!!」
なんて言いながら握手を求めてきました。
私は
「あの・・・大事なミーティング中なんですけど」
という言葉を飲み込みつつ、ここでも「目だけで」文句を言いながら握手をしました。
そうして一通りの挨拶も終わったのでこの突然の訪問者も空気を読んで退散するかと思いきや、
こともあろうか、どっかりと私の隣のソファーに腰をおろすのです。
「あの・・・大事なミーティング中なんですけど」
と心の中で叫んでいると、アリ氏が内線電話でカフェテリアにコーヒーを3人前注文しているのが聞こえました。
注文が終わるとアリ氏は私に向かって
「コウイチ、
ミーティングは終わりにしよう。
モハマドも来たし一緒にコーヒー飲もう!」
は・・・??
モハマド氏をみると私達のミーティングの邪魔をしたのだという意識は1ミリもないようで、やおらにタバコを取り出し、
アリ氏と長話がはじまってしまいました。
私は私で、その日のミーティングの結果をその日のうちに東京に連絡しなければならず引き下がれません。
仕方がないのでこのモハマド氏が帰るのを待つことにしました。
・・・1時間経過・・・
・・・2時間経過・・・
ようやくモハマド氏が「帰ろうかな」と腰を上げたのは終業時間をだいぶ過ぎてからでした。
モハマド氏が帰ってから私とアリ氏の会話は以下のようなものでした。
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私:ウチらのミーティング、どうすんの?
アリ:今日はまいった、友達が来てしまった。
私:モハマドさんは事前にアポ取ってたの?
アリ:いや、来るなんて知らなかった。
私:なんでミーティング中だって言えないの?
アリ:友人を追い返すわけにはいかないだろう?
私:で、今日の話はどうすんの?
今日中に東京に連絡入れないと
予算がつかなくなるんだけど。
アリ:明日にしよう、明日の朝一!
私:明日?東京は何て言うかわからんよ。
アリ:だってしょうがないじゃん、
友達が来ちゃったんだから。
明日何とかしようよ、OK?
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冒頭で「時間にユルい文化」の定義を記しましたが、
– – – – – – – – 時間にユルい文化 – – – – – – – –
・場当たり的に作業をすすめる。
・様々なことが同時に進行し、邪魔が入っても
受け入れられる。
・大切なのは組織性より順応性、柔軟性。
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というこれらの意味が身に染みてわかりました。
この後、私は東京に連絡をし、
「責任者がある会合に急遽呼ばれ
参加せざるを得ない状況に
なりましたため、
予算案の作成が完了しませんでした」
という苦し紛れの言い訳をしなんとか事なきを得ましたが、
時間にユルい文化圏の方との仕事は身も心も消耗することが多いのです。。。
※時間感覚の説明は
エリン・メイヤー著『異文化理解力(英治出版)』
より引用しました。
※時間感覚についての理論的説明については以下の記事もご参照ください!
モノクロニック文化とポリクロニック文化